茶道具を買取りに出す場合の茶道具の種類について
茶道具にはさまざまな種類と由来があり、茶道を嗜んだ人ならともかく、そうでない人にとっては名前や分類方法が分かりにくいものです。買取りに出す場合に所持している物の説明ができないと困ってしまうので、ここでは茶道具の種類について説明をします。
茶道具買取りのタイミング
侘び茶の大成者である千利休が堺出身であるように、大阪は茶道の中心でした。 その後三千家ができたのが京都であるにしても、大阪が茶道の中心地の一つであり続けたことには変わりありません。
そのため大阪は茶道具が多くある土地だと言えます。ではその大阪で茶道具を買取りに出す時にはどのようなきっかけがあるでしょうか。
- 茶道を止めたので茶道具が不要になった
- 遺産整理
- 新しい茶道具を揃えるために今使っている古い茶道具を売却したい
このような場合、茶道具の買取りを業者に依頼することになります。茶道を習った人が自分で売却する場合はよいのですが、その本人以外の人が買い取りに出す場合に、茶道具の名称がわからなくて困ることがあります。
茶道具には茶碗、湯釜、茶杓など、いろいろな道具が用いられます。それぞれ独特で奥の深いものです。茶碗など名前で用途のわかるものもあれば、棗など名前だけ聞いてもどのようなものか見当のつかないものもあります。
買取りに出す時に、物の名前がわからなければ説明に困りますので、ここでは茶道具の種類について説明をしましょう。
茶道具の種類
茶碗
茶碗は抹茶碗ともいい、メインの茶道具です。
茶碗の世界は奥が深く様々なものがあり、 芸術的な価値のある観賞用のものも比較的安価なものもあります。これを産地によって分けると、中国大陸由来の唐物、朝鮮半島由来の高麗物、日本国内で作られた和物があります。
唐物は一般に中国産の茶碗を指します。高貴で繊細な印象を持つ茶碗が多く、千利休のわび茶以前から、寺院や貴族や武家などで重宝されてきました。天目茶碗や、珠光青磁、景徳鎮、呉須赤絵などがあります。中国産以外にも現在のベトナムである安南産のものがあり、これも唐物に入ります。安南の茶碗は素朴な作風が特徴です。
高麗物は素朴で簡素な造りで、歪みがあることが特徴になります。高麗物という名前ですが、高麗時代よりも朝鮮王朝時代に作られたものが多いです。千利休のわび茶の前は華やかな唐物に人気がありましたが、わび茶以降は素朴な雰囲気のある高麗物の茶碗が好まれるようになりました。
井戸茶碗と粉青沙器が一例で、井戸茶碗にはさらに大井戸、古井戸(小井戸)、青井戸、井戸脇などの分類があります。粉青沙器には、三島、粉引、刷毛目といった技法や外観による分類があります。
和物の茶番は「一楽二萩三唐津」と呼ばれており、 その他にも備前、志乃、織部、信楽などがあります。
楽焼は京都の樂家から興った手捏ねの軟陶になります。繊細さと温かみを併せ持ち、 お茶をたてるために作られているため、茶碗の中で茶筅を動かしやすくする茶筅摺りや、飲み終えた後の見栄えを良くする茶溜まりなどの工夫があります。
唐津焼は平安時代から焼かれていたと言われます。重厚感があり素朴な雰囲気です。
萩焼は温もりと気品があり、使い込むほどに味わい深く変化します。
茶碗の形状については、口に向かって末広に広がっていく井戸茶碗、筒がまっすぐに伸びた筒茶碗、高さがなく口の開いた浅めの平茶碗があります。
茶筅
茶筅は湯を加えた抹茶を茶碗の中で混ぜるための道具で、竹製になります。細くなっている部分を穂と言います。穂の数は16本のものから120本のものまであります。 穂の本数が多いのは将軍や大名様と言われていますが、実際には穂の本数が多い方が抹茶を立てやすくて初心者向けなので、相手よりも多くの穂の本数の茶筅を使うことで「自分はまだ未熟なので」と謙遜し、相手に敬意を表す意味も持ちます。
掛物
掛け物は床の間に飾る掛け軸などを指します。文字を書いたものと、絵画を描いたものと、文字と絵画の両方が描かれたものがあります。文字を書いたものには、禅語や和歌や発句や、昔の茶人が書いた手紙などがあります。絵画には唐絵や大和絵があります。
茶器・茶入・棗
抹茶を入れて茶席に持ち出すための器を茶入または茶器と言います。濃茶には茶入を用い、茶器が使われます。
茶入は昔から茶人の関心が高く、名物がたくさんあります。中国で作られた唐物茶入、日本で作られた和物茶、東南アジアで作られた島物があります。
薄茶を入れる木でできた入れ物を棗と言います。棗とは植物の一つなのですが、この容器の形状が棗に似ていたために棗と呼ばれるようになりました。
茶入には寸胴で上部に肩のある肩衡、道が丸みを帯びていてりんごの形に似ている文琳、胴に丸みがあり尻が大きく首のない茄子、中央部分にクビレのある瓢箪、文琳に似た形で胴が丸みを帯びている丸壺、丸壺よりも首の長い鶴首、胴回りや口周りの大きい大海、胴回りや口周りの小さい内海があります。
水指
水指は茶席で必要な水を入れておく容器で、釜のそばに置きます。素材も形もいろいろなものがあり、産地も日本や中国だけではなく、東南アジアやヨーロッパのものが使われることもあります。
花入
花は茶席に季節感を表すもので、茶人が茶席を構成する際に、特に気を使うものです。そのため、その花を入れる花入れにも様々なものがあります。
材質で分けると、「真」と呼ばれる金属製のものや中国製の陶磁器、「行」という日本製の釉薬の掛かった陶磁器、「草」という釉薬の掛かっていない陶磁器や竹製のものがあります。
形状で分けると、中釘や床柱の花釘にかける掛花入、床の間の天井から吊るす釣花入、床に置く置花入があります。
香合
茶席ではお香を立てることがあります。これは香りを楽しむとともに部屋に清涼感を与えるものです。香合は香木を入れておく容器であり、炭手前を行わない場合は香合を床の間に花入と一緒に飾ります。 炭点前とは正式な茶席でお茶を点てる前に炉に炭をくべるもので、このとき香合を炭斗に入れて茶席に持ち出します。そのため、炭手前がない場合は床の間に飾っておくのです。
香合には陶器製、金属製、漆器製のものがあります。
炭斗
炭手前で用いられる炭斗とは、炭を入れて、香合、羽箒、釜敷、鐶、火箸を添えて席に持ち出すための器です。炭斗には唐物と和物があり、唐物炭斗は藤や竹で編んだ籠で、籠以外に漆器類の場合もあります。和物は藤、竹、藤蔓、蓮茎などで編んだものになります。籠以外にも瓢、一閑張、蒔絵、曲物、指物などがあります。
茶杓
茶杓は抹茶お茶淹れから茶碗にとり出すもので主に竹製ですが、象牙や木製のものもあります。茶人が自分で削るために、 好みや人柄を伺いやすく、茶道具の中でも重んじられています。
建水・蓋置
建水は茶碗を清めた後の湯や水を入れるもので、こぼしとも言います。また釜の蓋を置くときや柄杓を置くときに使う蓋置きがあります。
茶釜
茶席で湯を沸かす釜を茶釜と言います。茶釜は茶道具の中でも特別な存在で、大別すると芦屋、天命、京釜の3種類に分かれます。
芦屋釜の芦屋は兵庫県の芦屋ではなくて福岡県の芦屋になります。鎌倉時代から福岡県の芦屋では釜を生産しており、数ある茶釜の中でも芦屋釜は格調や品質に定評があります。しかし現在では芦屋釜は制作されていません。
天命は天明や天猫とも言われ、栃木県佐野市で作られた茶釜の総称です。なお天猫は「てんみょう」と読みますが、どれも「てんみょう」と発音するので、利休が洒落で名付けたということです。
京釜は室町時代末期から京都で作られてきたもので、他の産地のものが産地名だけで鋳物師の名前は出てこないのに対して、京釜では鋳物師の名前が前面に出てきます。